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きゅうりと約束
なんでオリグラがきゅうり?ってよく言われてて、一応理由は書いていましたが、
そこに至る経緯をSSにしてみました。
ハヤトの背後さんに使用許可はいただいております、ありがとうございました!
今回相談しながらやってたのですごく楽しかった!!ワーイヽ(゚∀゚)メ(゚∀゚)メ(゚∀゚)ノワーイ
追記からどうぞ♪
... Read more ▼
小4の終業式だったか。小学校の門の前でハヤトを待っていた。
一緒に帰る約束をしていたのだ。
「おねーさまー!」
振り向くと、鉢植えをさげたハヤトが歩いてくる。
ずいぶんと重そうだ。持とうか?と聞くとぶんぶんと首を振る。
「おねーさま、家に帰るまでが下校でごさいます!大丈夫です!」
「……どこで覚えたのそんな言葉。まあ、いいわ。ハヤト、それ夏休みの間に育てる鉢植え?」
「はい、きゅうりなんですよ!おねーさまはきゅうりを育てたことおありですか?」
「い、いや、ないわ」
思わず取り乱しそうになる。
普通こういうものって朝顔とかひまわりとか簡単な花だったりしないだろうか。
小学2年生にきゅうりはハードルが高すぎる気がする。
「ありませんか!おとー様やおかー様は育て方をご存知でしょうか?」
「多分知ってるとは思うけど、実際育てたことはあるかしらね。お祖父様ならあるんじゃないかしら」
少し困ったように考え込むと、ハヤトが慌てて取り繕うように手を振った。
「おねーさま、私自分で聞きに行きます!」
「ごめんなさいね。私が聞きにいければいいのだけど」
私は基本的に母とハヤト以外の血縁とは仲が悪い。
仲が悪いというよりも、私が嫌っているといったほうが早い。
私は旅館の跡取り娘なので、婿養子を取り、立派な女将になるようにと言いつかっているのだ。
それゆえ、父と祖父母は私に帰宅すると、着物の着付け、生花、お茶、、礼儀作法、日本舞踊を教え込まれている。日本舞踊は本来いらないと思うのだが、なぜか祖父は私に教えたいらしい。
「おねーさまはこんなに頑張っていらっしゃっているのになぜおとー様やおばあさまやおじいさまはおねーさまだけにきつくあたるのでしょうか?」
ハヤトが首をかしげる。
ぎぎぎと今にも音がしそうだ。
「きっとハヤトが可愛いからよ」
「そんなことないです」
私はその女将教育を受ける代わりに「ハヤトの身の安全」を保障させた。
女将の教育は必ず受ける。ただし、ハヤトには一切その「教育」はするな。もし、破った場合は私は出て行く。と。
いつか受け継ぐこの旅館も放棄する。
そこまで過激な条件をつきつけでもしない限り、「安全」は保障されないかもしれない、と思ったからだ。
幼心にこう思ったのもハヤトの七五三の時にその傾向が見られたからだ。「7歳になれば少しずつ旅館の仕事を覚えさせなければ」と言っていたのを私が5歳の時に聞いたからだ。
もしかしたら私のことを言ったのかもしれないが、
万が一ハヤトにもしものことがあったら……そう感じた私は約束を取り付けた。
その心配が杞憂であればいいのだけど。
でも、今のところ、みんなハヤトには優しい。
辛いのは私だけでいいのだから。でも、稽古を離れればどこにでもいる普通の親だとは思う。
そもそも、私はあまり旅館業には向いていない気がする。
不器用だし。








「おねーさま?どうかなさいました?」
「えっ?ええ、なんでもないのよ」
思わず難しい顔をこしていたのでハヤトが心配そうな顔をして覗き込んできた。
「心配してることがございますでしょうか!私、おねーさまのためなら
何でもいたします!」
「大丈夫よハヤト。ありがとう」
別に怒られる成績を取っているわけではない。
仮に怒られる成績を取っていたとしてもハヤトは本当になんとかしそうだけど。先生のところに行って「おねーさまの成績をなんとかしなさい!」とか。






二人で宿題はどれくらい出た、友達と約束はあるかなどの話をしているとようやく家に着いた。
「おかえりなさい、ハヤト、雪菜。
あら、きゅうりの鉢植えを持って帰ったの?少し難しいと思うけど」
お母様が玄関で笑顔で出迎えてくれる。
「ただいま帰りましたお母様」
「おかーさま、ただいまかえりました!」
ふたりで挨拶をすると、お父様も出てくる。
「帰ったのか、雪菜、ハヤト」
「ただいま帰りました、お父様」
「おとーさま、ただいまかえりました!」
「雪菜はすぐ着替えてきなさい。稽古をするぞ」
「おとーさま、私、おねーさまときゅうりの育て方をおじいさまに聞きに行きたいです!」
ハヤトが私の服の袖を引っ張る。
「そうか。ならば裏庭にいるから行って来なさい。それが終わったら稽古だぞ」
「ありがとうございます、お父様」
「たまにはいい。ハヤトと一緒によく聞いて準備をしてあげなさい」
お父様は奥へ歩いていった。
お祖父様のいるはずの裏庭に行ってみれば、お祖父様が片付けをしていた。
「お祖父様、ただいま帰りました」
「おじいさま、ただいまかえりましたー」
「おかえり、雪菜、ハヤト。おや、きゅうりか」
お祖父様がハヤトが手に持っている鉢植えを見つめた。
私が恐る恐る育て方をたずねると、やり方を教えてくれた。
藁を敷いたり、つるを棒にくくるなど色々条件が大変だ。
水遣りにもかなり気を使うらしい。
さすがに、覚えきれないので、友達と手紙交換をしているメモ帳を
使い、コツを書き取る。
その為に必要な資材を色々出してくれ、準備をしてくれる。
「あ、ありがとうございます」
私が頭を下げてお礼を言うと、ぽむりと頭を撫でられる。
「頑張りなさい」
……祖父に頭を撫でられたことなど、何年振りであろうか。
そう感じるほどに普通の会話などを交わしていないことに気づいた。
そもそも、稽古が終わると私自身が自室に引っ込んでしまうからだけど。
そう、やはり、私はどこかで怖い、と思っているのかもしれない。




翌日。
朝起きてみると、いつも寝ているはずのハヤトがいない。
もうきゅうりの世話をしているのだろうか。
階下に下りて、お母様に声をかける。
「おはようございます、お母様」
「あら、おはよう雪菜。朝ごはんできているわよ」
「ありがとうございます。……お母様、ハヤトはもうきゅうりの世話を?」
「ええ、さっき起きて。この後、お父さんとお祖父様ときゅうりの農場の見学に行くんですって。雪菜はどうする?」
「私、宿題を済ませてからお花の稽古をします」
「あら、今日は農場に行くからお稽古はしなくていいそうよ?少しくらいのんびりしたら?それに、今日は夏休み初日だし、そこまでお客さんも多くないわ」
母がにっこりと笑い、牛乳を出してくれる。
「ありがとうございます」
「お祖母様も今日は会議でお出かけだから、今日の分の宿題が終わったら好きに出かけるといいわ」
いつもなら出かけることもままならないので、気を遣ってくれたらしい。
「わかりました。ちょっとあとで雑貨屋さんへ行ってきます」
「ええ、行ってらっしゃい」
朝食を食べ終わり、計算ドリルと漢字ドリルを片付ける。そのあと、自由研究は何にしようか考えながら雑貨屋さんへ向かう。粘土工作はビンを使って花瓶を作る予定だ。そのための飾りを探しに来たのだ。
色々見て回っていると、幼馴染みに会い、挨拶をする。また今度空いた日にプールでも行こうよ、などと普通の話をして別れた。久しぶりにこんな時間を過ごせた気がする。



家に戻ると、ハヤトがホクホク顔で私を出迎えてくれた。
「おかえりなさいませ、おねーさま!」
「ただいま。きゅうりはどうだった?」
「おねーさま、きゅうりは上にどんどん伸びて羽が生えるんですよ!ご存知でしたか!?」
「し、知らなかったわ」
「そうだろうそうだろう、2mくらい伸びて羽が生えるんだ!」
お父様が自慢気に説明している。
嘘を教えないでほしい。
オラトリオではないので羽根は生えない。
でもこんなに目をキラキラさせて期待しているハヤトを前に嘘だよとはとても言えない。
どうしよう、言いたいけどすごく言えない。
ああ、嘘を訂正できないダメなお姉ちゃんを許して。
あの鉢植えが育ったとき、おねーさま、きゅうりに羽がはえません!
と泣かれたらどうしよう。
その時は説明はお父様に任せよう。
自分のやったことの責任は取ってもらう。



数日後。
ハヤトの泣き声で目が覚めた。
一体何事だ!?
慌てて裏庭に行くと、枯れたきゅうりの前で泣いているハヤトとお祖父様がいた。
「おはよう、雪菜」
「おはようございます、お祖父様。ハヤト、どうしたの?」
「きゅうりが、きゅうりがああああぁぁ!!枯れてしまいました!!これは、寝ずに看病しなければいけませんか!?冷えピタを持ってきてくださいまし!」
ハヤトが私に抱きつきながら泣き続ける。
「これは……どうしたのかしら?」
「つる割れ病だね、きゅうりにはよくある病気だな」
お祖父様が教えてくれる。
「これは治りませんか?」
「ちょっとかかると治せないね、仕方ないな」
「はっ、これは……まさしく不治の病!!栄養剤をプスッとすればよいですか!」
だからどこで覚えたそれは。
「ハヤト、どこで覚えたのだ。いや、むしろ少し肥料が多かったかもしれない。次回は肥料の配分を少し少な目にするといい。栄養がありすぎてもよくないんだよ」
お祖父様が土を触りながら教えてくれる。
「そうですか……次は頑張ります。ハヤト、もう泣かないで。次は枯れないきゅうりを頑張って作るわ!」
「枯れないきゅうりですか!羽根も生えますでしょうか?」
「ハヤト、ごめんね、羽根はどんなきゅうりも生えないわ……」
「な、なんですって!おとー様はまた嘘を……」
騙されたことがあるのか、ハヤト。
ならなぜ信じた。
「そ、そうね……」
「おとー様!おとー様!!また嘘をつきましたね!」
ハヤトがものすごい勢いで居間に走っていく。
「雪菜、朝ごはんにしよう。まだ食べていないだろう。そのあと、今から植えれる野菜の種まきを手伝いしておくれ」
「でも、お祖父様、お稽古は」
「夏休みだからな」
たまにはいいだろう、とお祖父様は笑った。
今日も暑くなりそうだ。
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